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レビューは内容だけで決まらない?クチコミの「役に立った」評価の仕組みとPR・マーケティング活用を解説!

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本記事で解説する論文

今回取り上げるのは、Cristian Danescu-Niculescu-Mizil、Gueorgi Kossinets、Jon Kleinberg、Lillian Leeによる2009年の論文「How opinions are received by online communities: A case study on Amazon.com helpfulness votes」です。公開元はProceedings of WWW 2009で、参照URLは https://arxiv.org/abs/0906.3741 です。研究分野はオンラインコミュニティ分析、口コミ研究、消費者行動にまたがります。

この研究の面白さは、レビュー本文が良いかどうかだけでなく、そのレビューが周囲の評価とどうズレているかで「役に立った」と見なされやすさが変わる点を、大規模データで検証したところにあります。口コミ施策、レビュー活用、SNS上の賛否設計を考える実務者にとって示唆の大きい論文です。

用語解説

Helpfulness vote
Amazonの「このレビューは参考になりましたか」のような評価です。この論文では、レビューそのものへの評価ではなく、レビューに対する評価を分析対象にしている点が重要です。
コンセンサス
同じ商品に集まったレビュー全体の平均的な評価傾向を指します。この研究では、あるレビューがコンセンサスに近いほど有用と見なされるのかが主要な論点になります。
評価分散
レビューの星評価がどれくらい割れているかを示す考え方です。賛否が割れている商品では、平均に近い意見より、少し立場がはっきりした意見のほうが役立つと見なされる可能性があり、論文の結論を理解する鍵になります。
個人バイアス
読む人が自分に近い意見を高く評価しやすい傾向です。この論文では、単純な「みんなに合わせるレビューが強い」という説明だけでは足りず、読み手側の立場が helpfulness に影響している可能性を検討しています。

研究背景と課題

EC、比較サイト、SNSでは、レビューの内容そのものだけでなく、「この口コミは役に立つ」と多数に評価された投稿が上位に残りやすくなります。実務ではこれを、良質な口コミが自然に選ばれている仕組みだと考えがちです。

ただし研究者たちは、そこに単純化しすぎた見方があると考えました。もし helpfulness (役に立ったという評価)が文章の質だけで決まるなら、レビュー評価はかなり中立的な指標として使えます。反対に、周囲の評価や受け手の立場に左右されるなら、企業がレビューやUGCを読むときの解釈を変えなければなりません。つまりこの研究は、口コミの人気は品質の証拠なのか、それとも社会的な文脈の結果なのかを問い直したものです。

研究の内容

研究方法

研究では、Amazon米国サイトの約400万件の書籍レビューと約67.5万冊分の商品データを中心に分析し、英国、ドイツ、日本のAmazonデータも比較対象として使っています。各レビューについて、星評価、商品の平均評価、helpfulness vote の比率を見比べ、レビューが全体平均からどれだけズレているかと、有用と見なされる確率の関係を調べました。

加えて重要なのが、レビュー本文の質だけが結果を作っているのではないか、という反論への対応です。著者らは、ほぼ同文の「重複レビュー」を利用し、文章がほぼ同じでも、置かれた文脈が違うと helpfulness(役に立ったという評価) のされ方が変わるかを確認しました。これにより、本文の良し悪しだけでは説明しきれない社会的要因を切り分けようとしています。

結果と考察

結論を簡潔に言うと、レビューが「役に立つ」と見なされるかどうかは、内容だけでは決まりません。特に重要なのは次の3点です。

  • 評価の分散が小さい商品では、平均に近いレビューが最も helpful と評価されやすいです。
  • 分散が中程度になると、平均よりやや高めの評価が有利になります。
  • 分散が大きく賛否が割れる商品では、平均ど真ん中の意見より、少し立場が明確な意見のほうが helpful と見なされやすくなります。

さらに、平均から少し外れたレビューを比べると、ややネガティブな意見は、ややポジティブな意見より不利に扱われる傾向も見られました。つまりAmazonの helpfulness は、単に「冷静で厳しいレビューが評価される」仕組みではありません。読者の多くが自分に近い意見を役立つと感じ、その集積が全体の評価結果になっている、と研究者は解釈しています。

この見方に立つと、helpfulness はレビュー品質の純粋指標というより、その商品をめぐる受け手集団の空気を反映した指標だと理解できます。PRやマーケティングで口コミを読むときも、件数や高評価率だけではなく、どんな論点で意見が割れているのかを見る必要があります。

PR・マーケティング施策へのヒント

実務で活かせるポイント

第一に、レビューやUGCを分析するときは、平均点だけでなく評価の分散を必ず見たほうがよいです。賛否が割れる商材では、「無難な説明」より、誰に向けた価値提案なのかを明確にしたメッセージのほうが刺さる可能性があります。

第二に、口コミの見せ方を設計する際は、「最も helpful な投稿」だけを鵜呑みにしないことです。それは市場全体の声というより、その時点の多数派や近い立場の読者に支持された結果かもしれません。ブランド施策では、初心者向け、ヘビーユーザー向け、価格重視層向けのように、読む人の立場別にレビューを整理するほうが有効だと考えられます。

第三に、SNSやPR文脈では、議論が割れやすいテーマほど「平均的な無難表現」だけでは弱くなりがちです。ターゲットごとに論点を切り出し、支持されやすい文脈を分けて発信するほうが、理解も納得も得やすいでしょう。

村上崇の視点

この研究はAmazonの書籍レビューを中心にした分析なので、BtoB商材、無形サービス、SNS短文投稿にそのまま当てはめるのは短絡的なので気をつけましょう。またこの論文は「どのレビューが helpful と見なされるか」を扱っており、売上やLTVへの直接効果を測った研究ではないので実務に移すなら、レビュー評価の見られ方、CV、離脱率、指名検索の増減などをセットで検証したほうがよさそうですね。

よくある質問

Q. helpfulness が高いレビューは、必ずしも一番質が高いレビューではないのですか?

A. はい、この論文はそうではない可能性を示しています。本文が有用でも、全体の評価傾向や読者の立場から外れると helpfulness が下がることがあり、逆に文脈に合う意見は高く評価されやすいです。

Q. PR担当者はこの研究をどこに応用できますか?

A. 口コミ分析、UGC整理、SNS投稿の論点設計に応用しやすいです。特に賛否が割れるテーマでは、平均的なメッセージを1本出すより、受け手セグメントごとに刺さる観点を分けたほうが効果的だと考えられます。

Q. ネガティブレビューは消したほうがよいのでしょうか?

A. この論文からそこまでは言えません。むしろ重要なのは、ネガティブ意見があるかどうかより、どの論点で意見が割れているかを読むことです。改善ポイントの発見や、期待値調整の材料として活用するほうが建設的です。

Q. SNSのコメント欄や動画の評価にも同じことが言えますか?

A. 完全に同じとは断定できませんが、受け手が自分に近い意見を支持しやすいという発想は応用できます。特にアルゴリズムで可視化される評価指標は、内容の質と社会的文脈の両方を反映している前提で読むべきです。

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著者

株式会社カーツメディアワークス
代表取締役

村上 崇

実績

  • 大手グローバルIT企業のマーケティング戦略
  • 国内上場企業の広報部立ち上げ支援
  • 最大手美容外科の広報戦略
    等多数
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