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企業が社会課題やニュースに絡めて発信する時に気をつけるべき点とは?炎上回避のヒントがわかる論文を解説!

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本記事で解説する論文

今回取り上げるのは、Jingjing Li、Nicole Montgomery、Reza Mousaviによる2022年の論文「How a Brand's Social Activism Impacts Consumers' Brand Evaluations: The Role of Brand Relationship Norms」です。公開元はarXivで、URLは https://arxiv.org/abs/2210.10832 です。研究分野はブランド戦略、消費者心理、危機コミュニケーションです。

この研究は、企業(ブランド)が社会的な論点に対して発信するか、沈黙するか、どう発信するかで、消費者の受け止め方がどう変わるのかを分析したものです。X(旧Twitter)上の実データ分析に加え、4つのランダム化実験で因果関係を検証しており、SNS時代のPR実務にかなり直結する内容です。特に、「どのブランドでも積極発信すればよいわけではない」という点が重要です。

用語解説

ブランド関係性
消費者がそのブランドを、単なる取引相手として見るのか、価値観や気づかいを期待する相手として見るのか、という関係の質です。この論文では、この関係性の違いが社会課題への発信の評価を左右します。
交換的ブランドと共同体的ブランド
交換的ブランドは「機能や価格をきちんと提供してくれること」が期待されやすいブランド、共同体的ブランドは「人や社会への配慮も示してほしい」と期待されやすいブランドです。論文の中心仮説はこの違いにあります。
高共感メッセージ
社会課題に触れる際、単に立場を表明するだけでなく、影響を受ける人々への理解や配慮を明確に示す発信のことです。この研究では、共同体的ブランドの評価を下支えする重要な要素として扱われます。
社会的アクティビズム
#MeToo や Black Lives Matter のように、社会課題について個人や組織が声を上げ、行動を促す動きです。本論文では、こうした動きがブランドにも応答を求める環境を生む前提として置かれています。

研究背景と課題

SNSの普及により、企業やブランドは以前よりもはるかに速く、社会課題に対する立場表明を求められるようになりました。何か出来事が起きたとき、発信しないこと自体が態度表明だと受け取られる場面もあります。PR担当者にとっては、発信しても炎上リスクがあり、黙っていても不信感を招くという難しい状況です。

ただ、既存研究では「ブランドが社会課題に関わると評価が上がるのか、下がるのか」の結果が一貫していませんでした。実務でも、Nikeのように支持を集める事例がある一方で、表面的だと批判されるケースもあります。著者らは、このズレを説明するには、ブランドと消費者の関係性を見ないと不十分だと考えました。つまり、どのブランドが、どの温度感で語るかまで含めて見ないと、発信の成否は読めないという問題意識です。

研究の内容

研究方法

研究は大きく2段階です。まず実データ分析では、X(旧Twitter)上の #MeToo を題材に、ブランドが発信しなかった場合に消費者評価がどう変わるかを見ています。そのうえで、4つのランダム化実験を行い、架空ブランドや異なる社会課題の文脈を使って、交換的ブランドと共同体的ブランドで反応がどう変わるかを検証しました。

実験では、ブランドの説明文や発信文面を操作し、参加者にブランド評価、購買意向、口コミ意向などを答えてもらっています。ポイントは、単に「発信したか否か」だけでなく、共感の弱い発信共感の強い発信を分けて比べていることです。これにより、社会課題への関与それ自体より、どういう姿勢で語るかが重要なのかを確かめています。

結果と考察

結果はかなり実務的です。共同体的ブランドは、社会課題に対して沈黙したり、気持ちのこもらない低共感の発信をしたりすると、交換的ブランドより厳しく評価されました。消費者は共同体的ブランドに対して、普段から「人や社会に配慮するはずだ」という期待を持っているためです。その期待を裏切ると、単なる無反応以上に失望が大きくなります。

一方で、共同体的ブランドでも高共感のメッセージを出した場合は、この不利がかなり和らぎました。つまり、ブランドの社会的発信では「発信した事実」だけでは足りず、そのブランドらしい配慮や理解が感じられるかが評価を左右します。逆に交換的ブランドは、社会課題に深く踏み込まなくても、共同体的ブランドほどは強い減点を受けにくい傾向が示されました。

この研究の重要な示唆は、社会課題への発信は一律の正解がないということです。ブランドが築いてきた関係性によって、消費者が期待する振る舞いは変わります。普段から理念や共感、コミュニティ性を前面に出しているブランドほど、有事の沈黙や形式的コメントは「らしくない」と見なされやすいわけです。

PR・マーケティング施策へのヒント

実務で活かせるポイント

第一に、社会課題への発信方針は、その場の話題性ではなく自社ブランドが普段どんな関係性を約束しているかから逆算したほうがよい、ということです。コミュニティ、共感、伴走、価値観共有を日常的に打ち出しているブランドほど、沈黙コストは高くなります。

第二に、発信するなら、正論を短く置くだけでは不十分です。研究結果を見る限り、影響を受ける人々への理解、なぜその発信をするのか、ブランドとして何を気にかけているのかが伝わる形にしたほうが、共同体的ブランドでは評価を守りやすいと考えられます。PR文面、SNS投稿、声明文、FAQのトーンまで一貫させる発想が有効です。

第三に、ブランドポジションの棚卸しにも使えます。もし自社が「親しさ」や「社会とのつながり」を強く打ち出しているなら、平時のブランド施策は有事対応の期待値を同時に上げています。ブランドづくりと危機広報を別物として扱わず、平時の言葉づかいと有事の応答設計をつないで考える必要があります。

村上崇の視点

この研究は、主にアメリカの社会運動文脈とSNS上の反応を前提にしているので日本の企業広報やBtoBの取引文脈では、同じ強さで反応が出ないとは思いますが、論文を読み解くと、行動が伴わないのに言葉だけ整えても、逆効果になるということです。少なくとも「共同体的なブランドほど、沈黙や低温の反応は危ない」「発信するなら共感の設計が重要」という方向性は、企業広報の情報発信の判断の基準として十分に参考になると思います。

よくある質問

Q. 社会課題については、企業・ブランドは積極的に発信したほうがよいのでしょうか?

A. この研究は、どのブランドにも一律に発信を勧めてはいません。重要なのは、そのブランドが普段どんな関係性を消費者に約束しているかです。共感や社会性を強く打ち出すブランドほど、無反応のコストが高いと読めます。

Q. 「高共感のメッセージ」とは、具体的に何が違うのですか?

A. 立場表明だけで終わらず、影響を受ける人への理解や配慮が伝わる点です。形式的な賛同表明よりも、誰にどう向き合うのかが見える文面のほうが、この研究では好意的に受け取られました。

Q. BtoB企業の広報にも応用できますか?

A. そのまま移植はできませんが、応用は可能です。BtoBでも、採用広報やパーパス発信で共同体的なブランド像をつくっている企業は多く、社会課題への無反応が期待不一致として受け取られる可能性があります。

Q. 炎上を避けるには、結局沈黙が安全ではないですか?

A. この論文の範囲では、少なくとも共同体的ブランドにとって沈黙は必ずしも安全策ではありません。発信の是非だけでなく、ブランドらしい温度感で語れているかを判断軸にしたほうが、より現実的です。

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著者

株式会社カーツメディアワークス
代表取締役

村上 崇

実績

  • 大手グローバルIT企業のマーケティング戦略
  • 国内上場企業の広報部立ち上げ支援
  • 最大手美容外科の広報戦略
    等多数
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