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オンラインで拡散されるコンテンツとは?SNS・PRで使える感情設計の考え方を解説!

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本記事で解説する論文

論文名:What Makes Online Content Viral?
著者:Jonah Berger, Katherine L. Milkman
発表年:2012年
公開元:Journal of Marketing Research
URL / DOI:https://doi.org/10.1509/jmr.10.0353
研究分野:口コミ研究、SNS拡散、感情心理、バイラルマーケティング

この論文は、「なぜ同じように公開された記事でも、あるものだけが強く共有されるのか」を調べた代表的研究です。ニューヨーク・タイムズの記事データと実験を組み合わせ、人がシェアしたくなる感情には一定の傾向があることを示しました。PRやSNS運用で「良い内容なのに広がらない」と感じるとき、コンテンツの情報量だけでなく、受け手の感情をどう動かすかを考えるヒントになる論文です。

用語解説

バイラル(viral)
人から人へ自発的に共有され、短期間で広がっていく状態を指します。この論文では再生数そのものより、「誰かが他人に渡したくなるか」が重要な視点です。
感情価(ポジティブ / ネガティブ)
感情が快か不快かという軸です。ただし本研究では、ポジティブかネガティブかだけでは拡散を十分に説明できず、次の「活性度」が重要だと示されました。
覚醒水準(arousal)
感情によって人の心身がどれだけ活性化するかを表す考え方です。驚きや怒りのように人を動かしやすい感情と、悲しみのように沈静化しやすい感情では、共有行動へのつながり方が異なります。
社会的伝播
情報がメディアから一方向に届くだけでなく、人づてに広がることです。PR実務では、掲載そのものよりも、その後に会話や共有が起きるかが成果を左右します。

研究背景と課題

広告や広報では昔から「面白いものは広がる」と言われてきましたが、実際には面白いだけでは広がらないコンテンツも多くあります。実務では、役立つ情報を入れる、タイトルを強くする、ポジティブに見せる、といった経験則はあっても、どんな心理が共有を引き起こすのかが曖昧でした。

本論文の著者たちは、拡散の成否を単なるセンスや偶然で片づけるのではなく、心理学の観点から整理しようとしました。特に重要なのは、「ポジティブな内容が広がるのか」「ネガティブでも広がるのか」「感情の種類によって違いがあるのか」という問いです。これは、ニュースの見出し設計、SNS投稿、口コミを狙う広告、オウンドメディアの記事企画など、PR・マーケティングの多くの施策に直結します。

研究の内容

研究方法

論文では、ニューヨーク・タイムズに3か月間掲載された全記事データを用い、どの記事が「Most E-Mailed」に載ったかを分析しています。記事のテーマ、掲載位置、実用性、驚きの強さなどを統制しながら、記事が呼び起こす感情と共有されやすさの関係を見ました。

さらに、観察データだけでは因果関係が断定しにくいため、著者たちは実験も行っています。たとえば、同じ情報でも読む人に高覚醒の感情を起こさせる条件と、そうでない条件をつくり、他人に共有したい気持ちがどう変わるかを確かめました。つまり、「よく共有された記事にそうした感情が含まれていた」のか、「そうした感情が共有を生んだ」のかを切り分けようとしたわけです。

結果と考察

結果は、なんとなく想定のつく範囲ですが、示唆に富んでいます。まず、全体としてはポジティブな内容のほうがネガティブな内容より共有されやすい傾向が確認されました。ただし本当に重要なのはそこだけではありません。著者たちは、共有を押し上げるのは感情の快・不快よりも、むしろ人を動かす強さだと解釈しています。

感情のタイプ共有されやすさ実務での読み替え
畏敬、驚き高い「これは誰かに見せたい」と思わせやすい
怒り、不安高い問題提起や危機感は共有を促しやすい
悲しみ低い共感は生んでも拡散には直結しにくい

つまり、ネガティブだから広がらないのではなく、低覚醒のネガティブ感情が広がりにくいということです。逆に、怒りや不安のように活性化を伴う感情は、ネガティブでも共有を後押しします。研究者はこれを、感情が人を行動モードに入れるからだと考えています。読み終えた瞬間に心が動くと、人は自分の中に留めるより、誰かに渡したくなるわけです。

PR・マーケティング施策へのヒント

実務で活かせるポイント

この研究を実務に置き換えるなら、まず見直したいのは企画会議での評価軸です。記事やSNS投稿を「情報量が多いか」「役に立つ情報か」だけで判断するのではなく、読後にどんな感情が立ち上がるかまで設計する必要があります。特にSNSやPRでは、受け手が第三者に渡したくなる理由を持てるかが重要です。

たとえば、製品紹介なら単に便利さを並べるより、「こんな発想があったのか」という驚きや、「今知っておかないと損かもしれない」という適度な緊張感をつくるほうが共有されやすい可能性があります。BtoBでも同じで、導入事例を淡々と説明するだけでなく、業界の常識を更新する示唆や、放置コストの大きさを伝える切り口のほうが会話の起点になりやすいでしょう。

また、広報文脈では「話題化」と「炎上」は近いようで違います。怒りや不安は確かに共有を促しますが、ブランド資産を傷つけるリスクも高いです。そのため、実務では畏敬、発見、驚き、強い納得感のような、前向きな高覚醒を優先したほうが再現性は高いと考えられます。

導入時の注意点

注意したいのは、この研究が「感情を強くすれば何でも広がる」と言っているわけではない点です。論文でも、実用性や面白さ、驚きなど複数要因を統制しています。つまり感情設計は重要ですが、内容そのものの価値が低ければ持続的な成果にはつながりません。

もう一点は、共有されやすさとブランドにとっての望ましさは別だということです。不安や怒りで短期的な拡散をつくれても、長期の信頼形成には逆効果になりえます。PR施策に導入するなら、「何が広がるか」だけでなく「その広がり方が自社ブランドに合うか」を必ずセットで判断すべきです。

このコラムでは世界の様々な広報・PR・マーケティング・ブランディングに関する論文を取り上げて、村上なりに解説していきますので今後もぜひチェックしてくださいね。

よくある質問

Q. PRやSNS投稿ではポジティブな内容だけを作れば拡散されやすいのでしょうか?

A. そうとは限りません。論文ではポジティブ全般がやや有利でしたが、共有を強く左右したのは覚醒水準でした。穏やかで無難なポジティブ表現より、驚きや発見を伴う内容のほうが広がりやすいです。

Q. 悲しみを訴えるストーリーはPRに向かないのですか?

A. 向かないとは言えませんが、拡散だけを見ると不利になりやすいです。悲しみは共感や寄付行動には結びつく場合がありますが、SNSで人が他人に渡したくなる動機とは別に考えたほうが安全です。

Q. BtoBマーケティングにも応用できますか?

A. 応用できます。BtoBでは感情を避けがちですが、「業界の見落としに気づく驚き」や「このままだと機会損失が出るという適度な危機感」は、資料共有や社内回覧の後押しになります。

Q. 炎上せずに高覚醒をつくるにはどうすればよいですか?

A. 怒りや対立に頼るより、意外な事実、鮮明な比較、常識の更新、実証データによる発見などで驚きを設計するほうが安全です。ブランドにとって望ましい感情の種類を先に決めてから企画するのが実務的です。

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著者

株式会社カーツメディアワークス
代表取締役

村上 崇

実績

  • 大手グローバルIT企業のマーケティング戦略
  • 国内上場企業の広報部立ち上げ支援
  • 最大手美容外科の広報戦略
    等多数
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