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海外PR戦略の立て方と実践方法|グローバル広報で成功する企業の共通点とは

日本企業のグローバル展開から、グローバル企業の国内進出展開まで様々な海外戦略広報を支援 「海外戦略PR・広報 コンサルティング」 サービス資料
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グローバル市場での競争力強化に向けた海外PR戦略の立て方と実践方法を詳しく解説していきます。成功企業の共通点を分析し、効果的な実践方法を提供します。現地市場への適応から文化的配慮まで、実務に役立つ包括的ガイドです。

はじめに

グローバル化が進む現代において、海外市場での認知度向上と信頼構築は企業の成長戦略において不可欠な要素となっています。しかし、多くの企業が海外PR戦略の立案と実行において課題を抱えているのが現実です。

本記事では、グローバルPRで成功を収めている企業の共通点を分析し、効果的な海外PR戦略の立て方から実践方法まで、実務に役立つ情報を提供します。

海外PR戦略の基本概念と重要性

海外PR戦略とは

海外PR戦略とは、企業が海外市場において自社の認知度向上、ブランド価値の構築、ステークホルダーとの関係強化を目的として展開する戦略的な広報活動です。当然、国内広報の戦略も重要ですが、海外展開中もしくは海外展開を想定している方は、国内と海外の広報の違いについて頭に入れておいたほうがいいでしょう。

国内PR活動との最も大きな違いは、言語、メディア環境、カルチャー、社会背景・情勢・法的規制などです。それらの違いを考慮し、各国メディアやジャーナリストへのアプローチが求められます。

グローバル広報の重要性

効果的な海外PR戦略は、ターゲット市場への参入のスピードアップをするためにも必要です。特に北米および中国は日本とは比べ物にならないほど競争が激しく、現地のツワモノたちがしのぎを削ってシェア争いをしています。特許を持っていたり、自社にしか出来ない技術や製品でもすぐに類似品が出てくると想定しておいてください。

そんな環境の中で重要なことは何よりスピードです。商品開発、マーケティング展開、もちろん広報活動においてもスピード感が重要です。PR活動をすることで、現地メディアでの露出を通じて、消費者の認知度を迅速に高めることが可能です。

誰も貴社やその商品について知らない状況で、認知度と信頼度の向上はマーケティング活動の視点においても最も重要な指標であり迅速に進めていくべきタスクです。

PR活動を実施することで、第三者であるメディアからの評価、報道掲載により、企業の信頼性が大幅に向上します。さらにそのニュースを見た人たちがSNSでシェアしていくため、信頼構築の核となる活動と言っていいでしょう。

また、競合優位性の確立では戦略的な広報活動により、競合他社との差別化を図り、市場における独自のポジションを確立できます。

グローバル広報戦略の策定プロセス

戦略策定の6段階アプローチ

海外PR戦略の成功は、体系的なアプローチによって実現できます。以下の6つの段階を順次進めることで、効果的な戦略を構築できます。

第1段階: 現状分析と目的設定

まず自社のグローバル事業戦略の把握から始めます。海外市場における現在の認知度や報道分析、競合他社の海外PR活動分析を行い、具体的な目標設定(認知度向上、売上拡大、ブランド価値向上など)を明確にしましょう。

第2段階: ターゲット市場およびメディア分析

現地の市場規模と成長性、競合環境の分析、自社製品・サービスとの適合性、規制環境と参入障壁、文化的親和性といったマーケティングリサーチに加えて、現地のメディア分析もしておきましょう。主要メディアの特性と影響力、記者・編集者の特徴と関心分野、報道スタイルと論調、デジタルメディアの普及状況などを調べておくと間違いありません。

また基本的なSNSプラットフォームの各利用率なども調査しておきましょう。

第3段階: 文化的背景の理解

対象市場の消費者行動パターン(EC利用率や流通経路)、コミュニケーション文化、メディア接触習慣、価値観と関心事、宗教的・政治的配慮、年間行事などの事項を詳細に調査し理解することが重要です。この段階での理解の深さが、後の戦略や広報企画の立案に大きく左右します。

第4段階: メッセージ戦略の構築

ローカル言語でのコアメッセージの設定、現地文化や習慣に適応したメッセージ調整、ステークホルダー別メッセージ開発の準備を行いましょう。

グローバルレベルでのコンセプトメイキングは広報部だけでは完結しないことが大半なので、各部署やパートナーたちとしっかりと時間をかけて練り上げたいものです。

第5段階: リソース配分と体制構築

現地パートナーの選定と協力体制の確立、社内実行チームの編成と役割分担、予算配分とリソース計画を策定します。

第6段階: 実行計画の策定

年間広報活動スケジュール、効果測定指標の設定を含む包括的な実行計画を策定します。

海外PR実践のための実行フレームワーク

基盤構築フェーズ

日本国内から出来る海外向けPRの実践について

テクノロジーが普及したおかげで、現在は、日本国内から海外に向けてプレスリリースやニュースレターの配信、またメールやチャットでのメディアピッチ、ビデオでのインタビューやプレゼンなどは、やりやすい環境になりました。

いきなり海外に広報部門を持つ、PR会社と契約するというのはコスト、管理する時間やコミュニケーションも、ハードルも高いのでできる限りのことは国内で実施していくべきです。しかし、本格的に現地に法人を作る、取引先を全米に増やす、などのフェーズになればそれ相当のPR会社や広告代理店とパートナーシップを組む必要があります。

現地PR会社とのパートナーシップの構築

本格的な海外進出に伴い、海外PR戦略を実行・成功させるには、現地の文化と市場を深く理解したPRパートナーが必要になってきます。

現地PR会社選定時には、業界経験と同業界での実績、主要メディアとの関係性、現地文化への深い理解と適応能力、過去の成功事例と数値的な成果、専任担当者の配置とサポート体制を重点的にヒアリングし、場合によってはセカンドオピニオン的な評価も必要があります。

カーツメディアワークスでは長年の海外PR経験から信頼できるパートナーをご紹介することが可能ですので、海外PR会社をお探しでしたらいつでもお声がけください。またPR会社をコントロールする人材がいない、英語人材がいないということでしたら、カーツメディアワークスが代行することも可能です。

広報コンテンツ開発フェーズ

PRコンテンツのローカライズ化

単なる翻訳ではなく、現地の文化的背景を踏まえた「現地化(ローカライゼーション)」が重要です。言語調整では現地で自然な表現への調整、価値観反映では現地の価値観に合わせたメッセージ調整、事例活用では現地で理解しやすい事例への変更、視覚的調整では色彩、デザイン、イメージの文化的適応を行います。

また北米やイギリスのPR習慣に限った場合ですが、プレスリリースを乱発するようなことはしません。多くてもせいぜい月1本程度です。これは公式のプレスリリースに限っての話です。それだけしか発信しないのか?と思うのかもしれませんが、あとはニュースレターやプレスキット(日本ではファクトブックがこれにあたる)をジャーナリスト個別にメール配信していくのがスタンダードです。

また日本だと電話でまずはアポをいただいて、対面でご挨拶しないと、と思うかもしれませんが、嫌がられて終わりです。よほど仲良くなれば友達感覚で会ってお話するのがいいかと思いますが、メールで伝えていくのが基本です。興味持ってもらえれば電話やビデオ会議などで直接会話するのがいいでしょう。

件名の作り方において、日本では「【○○株式会社】新製品発表会のご案内」といった丁寧で分かりやすい表現が好まれます。一方、アメリカでは「Story Idea: Why Your Readers Care About...」のような簡潔でクリエイティブな表現が効果的です。

本文の構成では、日本が挨拶→背景→本題という丁寧な導入を重視するのに対し、アメリカでは結論ファースト(Why you, Why now?)の構成が絶対的なルールです。ジャーナリストは1日に数百通のピッチメールを受け取るため、最初の1〜2文で明確に価値を伝えなければ、すぐにメールを閉じられてしまいます。

実行・展開フェーズ

メディアリレーション構築

継続的なメディアリレーション構築には段階的なアプローチが効果的です。第1段階の認知獲得では、適切な自己紹介と企業紹介、定期的な情報提供の開始、記者の関心分野の把握を行います。第2段階の信頼構築では、正確で価値のある情報提供、約束の履行と迅速な対応、独占情報の提供を心がけます。第3段階のパートナーシップでは、記者のニーズに応じた企画提案、専門家としての意見提供、長期的な関係の維持を目指します。

現地メディアとの効果的なコミュニケーションには、メディアの締切やニュースサイクルを考慮したタイミング、記者の好みに合わせた連絡方法の選択、簡潔で価値のある情報の提供、適切なタイミングでの進捗確認が重要です。

評価・最適化フェーズ

海外PR活動の効果を適切に測定するためには、以下のKPIを設定していきましょう。

  • メディア露出: 掲載数、リーチ数、広告換算価値等(メディアモニタリング、クリッピング分析で測定)
  • エンゲージメント: SNS反応、シェア数、コメント数(SNS分析ツール、エンゲージメント率測定で測定)
  • ビジネスインパクト: 問い合わせ数、売上、利益、などビジネス側面のKPI

日本とアメリカのメディアピッチの違い

文化的アプローチの根本的違い

海外PR戦略を成功させるためには、各国のメディア文化を深く理解することが不可欠です。特に日本とアメリカでは、メディアピッチ(メディアへの情報提供やアプローチ)において根本的な違いがあります。

日本のアプローチは関係性重視(組織対組織)を基本とし、記者クラブ制度の影響を色濃く受けています。大手メディアの記者と継続的な関係を築き、「信頼できる情報源」として認識されることが重要です。そのため、丁寧なやり取りを重ね、組織としての信頼関係を構築していくスタイルが基本となります。

アメリカのアプローチはニュースバリュー(報道価値)重視が中心で、ジャーナリストは独立した個人として、常に新しいニュースの種を探しています。彼らにとって最も重要なのは「それがニュースになるか?」「自分の読者にとって価値があるか?」という点です。

また、担当記者の過去記事への言及、SNSでの交流、有益な情報提供による「パーソナライゼーション」も極めて重要です。特定の記者の過去の記事を読み込み、ピッチ内容をその記者の関心事に合わせることが効果的です。

重視される要素では、日本が正確性、網羅性、企業の信頼性を重視するのに対し、アメリカでは新規性、独自性、ストーリー性、データが重要視されます。単なる事実の羅列では記者の心は動かず、その情報がなぜ重要なのか、社会にどんな影響を与えるのか、そこにどんな人間的な物語があるのかといった「ストーリー性」が求められますので日本との違いを十分理解しておいてください。

成功企業の共通点分析

グローバル広報で成功する企業の特徴

1. 長期的視点での戦略策定

成功企業は短期的な成果を求めるのではなく、3-5年の長期的な視点で海外PR戦略を策定しています。単純な記事露出ではなく、継続的な関係構築を重視する姿勢が成功の要因となっています。

2. 現地文化への深い理解と適応

成功企業は表面的な翻訳ではなく、現地の文化的背景を深く理解し、それに適応したコミュニケーションを行っています。北米では直接的コミュニケーションと個人主義に合わせて明確な価値提案と個人の成功体験を重視し、欧州では環境・社会意識と品質重視の文化に対してサステナビリティと職人技術を強調し、アジアでは関係性重視と長期的視点に合わせて信頼関係構築と現地パートナーシップを重視しています。

3. 統合的なコミュニケーション戦略

成功企業はPR活動を単独で考えておらず、マーケティング、営業、カスタマーサポートと連携した統合的なアプローチを取っています。マーケティング連携ではPR活動で獲得した認知度をマーケティング活動で刈り取り、営業連携ではメディア露出をセールスツールとして活用し、カスタマーサポート連携では顧客の声をPR活動に反映させています。

4. データドリブンな意思決定

成功企業は直感や経験だけでなく、データに基づいた意思決定を行っています。メディア分析では各メディアの影響力とターゲット層の分析、競合分析では競合他社のPR活動とその効果の分析、消費者調査では定期的な認知度・イメージ調査の実施、ROI測定ではPR活動の投資対効果の定量的評価を行っています。

5. 継続的な改善と学習

成功企業は海外PR活動を一度設定したら終わりではなく、継続的に改善し、学習を続けています。四半期ごとの戦略レビューと調整による定期的な戦略見直し、失敗事例の分析と改善策の実装による失敗からの学習、成功事例の他地域への横展開によるベストプラクティス共有、新しいメディアトレンドへの迅速な対応によるトレンド対応を実践しています。

地域別PR戦略の実践方法

北米市場でのPR戦略

北米市場は世界最大のメディア市場であり、多様性と競争の激しさが特徴です。成功のためには差別化された価値提案と継続的な露出が重要です。効果的なアプローチとして、業界専門家としての地位確立を目指す思想リーダーシップ、定量的な成果と根拠の提示を重視するデータ重視、迅速な情報提供とレスポンスを心がけるスピード感、技術革新と将来性を強調するイノベーションが求められます。

欧州市場でのPR戦略

欧州市場は多様な国と文化から構成され、環境・社会意識が高く、品質と信頼性を重視する傾向があります。効果的なアプローチとして、環境配慮と社会的責任を強調するサステナビリティ、技術力と信頼性を訴求する品質重視、各国の文化的特性への配慮を行う現地適応、厳格な規制環境への適応を図る規制対応が重要です。

アジア市場でのPR戦略

アジア市場は急速な成長を続けており、デジタル化が進んでいます。関係性重視の文化と長期的な視点が重要です。効果的なアプローチとして、長期的な信頼関係を構築する関係構築、現地企業との協力関係を重視する現地パートナーシップ、SNSとオンラインメディアを積極活用するデジタル活用、各国の文化的特性への深い理解を示す文化的配慮が求められます。

まとめ:海外PR成功のための重要ポイント

海外PR戦略の成功には、戦略的な思考と実践的な実行力の両方が必要です。本記事で解説した内容を踏まえ、以下の重要ポイントを再確認してください。

成功のための10の重要ポイント

  1. 長期的視点: 短期的な成果に惑わされず、3-5年の長期戦略を策定
  2. 文化的適応: 現地の文化的背景を深く理解し、それに適応したコミュニケーション
  3. 現地パートナーシップ: 信頼できる現地パートナーとの協力関係構築
  4. 統合的アプローチ: PR活動を他の事業活動と統合した包括的な戦略
  5. データドリブン: 感覚に頼らず、データに基づいた意思決定
  6. 継続的改善: PDCAサイクルを回し続ける改善体制
  7. 危機管理: 平時からの準備と迅速な対応体制
  8. メディアリレーション: 現地メディアとの長期的な信頼関係構築
  9. 効果測定: 多面的な効果測定と改善への反映
  10. 学習組織: 失敗から学び、成功を横展開する組織能力

グローバル化が進む中で、海外PR戦略の重要性はますます高まっています。同時に、デジタル技術の進歩により、PR活動の手法も急速に変化しています。成功企業は、これらの変化に適応しながら、本質的な価値である「信頼関係の構築」と「継続的なコミュニケーション」を重視し続けています。海外PR戦略は一朝一夕で成果が出るものではありませんが、継続的な取り組みにより、必ず企業の海外展開を加速させる強力なツールとなります。本記事で紹介したフレームワークと実践方法を活用し、自社に最適な海外PR戦略を構築してください。

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著者

株式会社カーツメディアワークス
PR事業部 戦略PR局執行役員

森山 稚夏

実績

  • コスメブランドの広報戦略・施策実行
  • 国内BtoB上場企業の広報戦略支援/記者発表会 企画・運営
  • 有名飲食チェーンの広報戦略・施策実行
    等多数 
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