メディア体験会からプレス試食会、工場見学、プレスツアーまで効果的なプレスイベント完全ガイド

デジタル化・AIが普及する現代において、体験による価値伝達「情報体験」がますます重要になっています。プレスイベントは、企業が報道関係者に対して商品・サービスの魅力を五感で伝える強力な広報施策です。本記事では、メディア体験会、メディア試食会からプレスツアーまで、効果的なプレスイベントの企画・実施方法を成功事例とともに解説します。
プレスイベントの基本理解
プレスイベントとは何か
プレスイベントとは、報道関係者を対象とした体験型PR活動の総称です。従来のプレスリリースが一方向の情報発信であるのに対し、プレスイベントは「体験価値」を伝え、双方向のコミュニケーションを通じて深い理解と信頼関係を構築できます。
なぜ今、プレスイベントが重要なのか
現代の環境において、価値ある情報とは、「臨場感」や「感情」を伴う情報です。生成AIを使えば誰でもニュースや番組台本は書けてしまう世の中に突入しようとしています。その中で「体験価値」だけがAIやデジタルでは決して提供できないことなのです。今後プレスイベントだけでなく、広報、マーケティング、ブランディングの中でも「体験価値」は最も重要なキーワードになっていくことでしょう。
プレスイベントの主要な種類

一言で「プレスイベント」と言っても様々な手法があります。それぞれにマッチしたプレスイベントを企画し、実行していくことが広報担当者の重要な仕事なのです。
1. メディア体験会
新商品や新サービスを記者が実際に体験できるイベントです。業界や商品特性に応じて様々な形態があります。
食品・飲料の試食会
- 内容: 新商品の味、食感、香りを直接体験
- 特徴: 調理実演、原材料説明、製造過程紹介
- 効果: 商品の魅力を多角的に伝達
化粧品・美容関連の体験会
- 内容: 実際の使用感、効果を体験
- 特徴: メイクアップアーティストによる実演、肌質測定
- 効果: 商品の特徴を具体的に実感
IT・テクノロジーのデモンストレーション
- 内容: 新技術や新サービスの実演
- 特徴: 操作体験、比較デモ、技術者による詳細説明
- 効果: 革新性や有用性を体感
2. プレスツアー
企業の施設や製造現場を記者が実際に訪問する形式です。現場の雰囲気や企業の実態を直接感じ取ってもらうことを目的としています。
工場見学型
- 対象: 製造業
- 内容: 生産現場、品質管理体制、技術力の紹介
- 効果: 企業の信頼性と製品品質をアピール
地域連携型
- 対象: 地域資源活用事業
- 内容: 生産者との対話、地域文化体験、現地製造見学
- 効果: 企業の社会的責任を具体的に示す
海外展開型
- 対象: 海外展開するグローバル企業
- 内容: 海外現地の見学、スタッフとの交流、文化的背景の理解
- 効果: 国際展開の実際の様子を伝達し、国内および海外メディアで報じてもらう
3. メディア勉強会・ランチョンMTG
業界の専門知識や技術について教育的な要素を含んだ体験や気軽にランチを食べながらリレーションを構築する手法です。記者の専門性向上に貢献しながら、企業の専門性をアピールします。
勉強会型
- 対象: IT、テクノロジー、医療、美容、コスメなど様々な企業が対象
- 内容: 業界の重要なトレンドや新しいキーワードや技術をわかりやすく解説
- 効果: 業界および商品・サービス理解を深め、より内容の濃い記事掲載を促進
ランチョン(ランチMTG)型
- 対象: オールジャンルの企業が対象
- 内容:業界のことや商品・サービスのことを報道関係者に説明した後にランチを食べながらリレーションを構築する。
- 効果: 業界記者や専門ライターとのリレーション構築、継続的な情報提供
成功するプレスイベントの企画プロセス
プレスイベントの成功は、単なる情報の伝達以上のものです。それは、メディアとの強固な関係を築き、ブランドの認知度を高め、最終的にはビジネス目標を達成するための戦略的な機会です。このプロセスを成功させるためには、入念な計画と細部へのこだわりが不可欠です。
STEP1: 明確な目的設定
プレスイベントを企画する上で最も重要なのは、その「目的」を明確にすることです。目的が曖昧なままでは、イベントの方向性が定まらず、結果として期待する効果を得ることができません。目的は具体的かつ測定可能であるべきです。
例えば、単に「新製品を発表する」という漠然とした目的ではなく、以下のように具体的に設定します。
- 新製品の認知度向上: 新製品Aの発売により、主要メディア(新聞、テレビ、Webメディアなど)で少なくとも10件の掲載を獲得し、一般消費者の認知度を20%向上させる。
- 企業イメージの刷新: 環境への取り組みに関するプレスイベントを通じて、企業のサステナビリティに対する真剣な姿勢をメディアに伝え、企業の社会貢献に対するイメージを向上させる。
- 特定ターゲット層へのリーチ: 若年層をターゲットとした新サービスについて、インフルエンサーを含むデジタルメディアを中心に情報発信し、登録者数をイベント後3ヶ月で1万人増加させる。
- 競合他社との差別化: 自社独自の技術やサービスの特徴を強調し、競合他社との比較記事において優位性を確立する。
目的が明確になることで、イベントのコンテンツ、形式、招待メディアの選定、予算配分、効果測定の方法まで、全ての企画プロセスが一貫性を持って進められます。これは、成功への第一歩であり、最も重要な土台となるのです。
STEP2: コンセプト設計
目的に基づいて、イベント全体を貫くコンセプトを設計します。このコンセプトは、会場選定、プログラム構成、装飾、配布物などすべての要素に一貫性を持たせる指針となります。
- 一貫性の保持: 会場選定からプログラム構成、装飾、配布物、さらには当日メディアに提供する情報に至るまで、すべての要素がこのコンセプトに沿って構築されることで、イベント全体に統一感が生まれます。
- メッセージの明確化: コンセプトが明確であるほど、イベントを通じて伝えたいメッセージがブレることなく、メディアに効果的に伝わります。
- 差別化の創出: 競合他社のイベントと差別化を図り、メディアの記憶に残るユニークな体験を提供するためには、独自のコンセプトが不可欠です。
- メディアの興味喚起: 魅力的なコンセプトは、メディアの関心を引きつけ、取材意欲を高める要因となります。
STEP3: 効果的なコンセプト設計のポイント
- ターゲットメディアの理解: どのようなメディアに、どのような情報を届けたいのかを具体的にイメージし、彼らが関心を持つであろう切り口やテーマを検討します。
- キーメッセージの抽出: イベントで最も伝えたい核となるメッセージを簡潔にまとめます。これはコンセプトの根幹となります。
- 体験価値の創出: メディアがイベントを通じてどのような体験を得られるのか、どのような感情を抱くのかを具体的に想像します。例えば、「革新的な技術に触れる体験」「新たなビジネスモデルを学ぶ体験」など、具体的な体験価値をコンセプトに盛り込みます。
- 五感に訴える要素の検討: 視覚(装飾、映像)、聴覚(BGM、プレゼンテーション)、味覚(ケータリング)、嗅覚(アロマ)、触覚(体験デモ)など、五感に訴えかける要素をコンセプトに統合することで、より記憶に残るイベントとなります。
- ユニークネスの追求: 他のイベントにはない独自の要素や視点をコンセプトに盛り込むことで、イベントの独自性を際立たせます。
STEP4: コンセプトを具現化する要素
- イベント名・サブタイトル: コンセプトを反映した魅力的な名称を設定します。
- キービジュアル: コンセプトを象徴するビジュアルをデザインし、プロモーション活動に活用します。
- 会場の選定基準: コンセプトに合致した雰囲気や機能を持つ会場を選定します。例えば、テクノロジー製品の発表会であれば、近未来的な空間や、製品の機能性を最大限に引き出せる設備が整った場所が考えられます。
- プログラム内容: コンセプトに基づき、どのようなコンテンツ(プレゼンテーション、デモンストレーション、Q&Aセッション、ネットワーキングタイムなど)を盛り込むかを具体的に計画します。
- 演出・装飾: 会場の雰囲気や装飾をコンセプトに沿って統一し、視覚的なメッセージを強化します。
- 配布物・資料: プレスリリース、製品資料、ノベルティなど、配布物もコンセプトに沿ったデザインや内容にします。
- 登壇者・ゲスト: コンセプトを体現する人物を選定し、彼らのメッセージがコンセプトと整合していることを確認します。
コンセプト設計は、イベントの成否を分ける非常に重要なプロセスです。時間をかけ、チームで十分に議論を重ねることで、記憶に残る魅力的なプレスイベントを実現することができます。
実施段階での成功ポイント

プレスイベントのスケジュールを見ながら実施段階のポイントを解説します。
理想的なタイムスケジュールとは?
時間帯 | 内容 | 所要時間 | 留意点 |
10:00-10:05 | 受付・開会挨拶 | 5分 | 遅刻者への配慮 |
10:05-10:25 | 企業・商品概要説明 | 20分 | 簡潔で分かりやすい説明 |
10:25-11:15 | メイン体験コンテンツ | 50分 | 最も重要な時間帯 |
11:20-11:40 | 質疑応答・個別取材 | 20分 | 十分な対話時間の確保 |
12:00-13:00 | 懇親会(任意参加) | 60分 | リラックスしてランチョンMTG |
プレスイベントの成功事例から学ぼう
事例1: プレミアム日本酒の試飲会
企業: 地方の老舗酒造メーカー
目的: 新商品の高級日本酒の認知度向上と販路拡大
実施内容
- 杜氏による酒造りの実演とこだわりの説明
- 異なる種類の日本酒のテイスティング体験
- 蔵見学と製造工程の詳細説明
- 地元食材を使った料理とのペアリング体験
- 杜氏と参加者の直接対話セッション
成果
- 参加メディア: 20社
- 掲載記事: 18件(掲載率90%)
- 記事の総リーチ数: 150万人
- イベント後1ヶ月の売上: 前年同期比200%
- 新規取引先: 5社
成功要因
- 杜氏の人柄と情熱が記者に強く印象を与えた
- 実際の製造現場を見学できる貴重な機会を提供
- 日本酒の奥深さを五感で体験できる構成
- 地域の文化や伝統との結びつきを強調
事例2: AI技術体験イベント
企業: AI技術開発ベンチャー企業
目的: B2B向けAIサービスの技術力アピールと導入促進
実施内容
- AIによる画像認識技術の実演
- 実際のビジネス現場での導入事例紹介
- 参加者自身がAIを操作できる体験コーナー
- 技術者によるQ&Aセッション
- 導入企業担当者による成果発表
成果
- 参加メディア: 25社
- 掲載記事: 22件(掲載率88%)
- 技術系メディアでの詳細記事: 8件
- イベント後の問い合わせ: 50件
- 商談成約: 3件
成功要因
- 複雑なAI技術を分かりやすく体験できる仕組み
- 実際の導入効果を具体的な数値で示した
- 技術者の専門性と熱意が伝わる構成
- 参加者が実際に操作できる体験価値
まとめ:プレスイベントを成功させるには
プレスイベントの本質的価値は、五感を通じた直接的な体験による深い理解と信頼関係の構築にあります。デジタル化が進む現代においても、人間の感覚を通じた体験は他の手法では代替できない独自の価値を持っています。
成功のための4つの要素
- 明確な目的設定: 何を、誰に、どのような方法で伝えるかの明確な定義
- 体験設計の質: 五感に訴える高品質な体験設計
- 関係性の構築: 長期的な信頼関係を構築する視点
- 継続的な改善: データに基づいた効果測定と改善の継続
効果的なプレスイベントは、企業と社会をつなぐ重要なコミュニケーション手段として、今後も発展し続けるでしょう。参加者にとって価値のある体験を提供し、社会により良い情報を発信するという使命感を持って取り組むことが、最も重要な成功要因です。
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